先週公開された映画、「ホビット 思いがけない冒険」。 トールキンの「ホビットの冒険」を映画化したもので、原作を三部作にわけて映画化したので、今年はその第一作です。 同じくトールキンの「指輪物語」の映画化作品、「ロード・オブ・ザ・リング」と同じピーター・ジャクソン監督で、物語的には「指輪物語」より少し前の話になります。
公開されてまだ一週間くらいなんですが、なぜかもう二回も映画館で見てきてしまいました。
一回目は、公開二日目の12/15に、109シネマズ川崎にて。 二回目は、公開五日目の12/18にTOHOシネマズ六本木ヒルズにて。(こちらはニュージーランド政府観光局主催の関係者向け特別上映会でした。)
(ちょっとネタバレあり)
あらすじ
ホビット庄のビルボ・バギンズの家に魔法使いのガンダルフが来訪。ガンダルフのたくらみで、トーリンを首領とする13人のドワーフがおしかけてくる。 彼らの目的はスマウグに奪われた先祖の地エレボールを取り戻すことだった。 途中、トロルに捕まって食べられそうになるが、ビルボとガンダルフにより危機を回避。 また、魔法使いのラダガストがドル・グルドゥアの丘でネクロマンサーの出現を検知。 オークやワーグに追われたりしながらも、一行は裂け谷に到着。 裂け谷ではエルロンドがエレボールに入るための地図の隠し文字を解読する。 さらに旅を続ける途中、霧ふり山脈でゴブリンたちにつかまる。そこでビルボはドワーフとわかれてしまい、地下でゴクリが持っていた「一つの指輪」を手に入れる。ゴクリとビルボはなぞなぞの勝負をし、ビルボが勝利する。 ビルボとドワーフ、ガンダルフは再会するが、アゾグに襲われトーリンが重傷を負い、グワイヒアに助けられ、旅を続ける。 ……とまあ、こんなところです。
「指輪物語」や中つ国の歴史を知らないとちょっとわかりづらい部分もあり、初心者にはストーリーを完全に理解するのは難しいかもしれません。
オークのアゾグのエピソードや、彼らに追われる部分、またラダガストの登場部分などについては原作にはなかった部分ですし、原作には登場していなかった人物も不自然ではない範囲でちらほらと登場しています。
「ロード・オブ・ザ・リング」とのつながり
物語全体が「指輪物語」につながる作品なので、世界観を始めとして「ロード・オブ・ザ・リング」と重なる部分は多いんですが、「ロード・オブ・ザ・リング」を見た人になるほどと思うシーンも多いです。
映画の冒頭のホビット庄の部分で、フロドが登場するシーンがあります。 物語の中の時期的には、ビルボの111歳の誕生日の直前。 ビルボと言葉をかわしたあと、「ガンダルフを迎えに行かないと」と袋小路屋敷をあとにするフロド。 ここから「ロード・オブ・ザ・リング」のフロドとガンダルフの馬車シーンにつながるわけなんですよね。 まだ屈託がないフロドを見ていると、このあと彼に待っている苦難の日々を思い出して、泣けてきそうでした。
そして、もちろん「ロード・オブ・ザ・リング」に登場した懐かしい人たちも登場。 ガンダルフはもちろんですが、エルロンド卿やサルマン、そしていつまでも若く美しいガラドリエル様。 もちろん「ロード・オブ・ザ・リングと同じキャストですが、年月がたったことを全く感じさせませんでした。
ハイフレームレート
今回の「ホビット 思いがけない冒険」は、「ハイフレームレート」という新しい撮影手法をとりいれています。
フレームレートとは、一秒間に表示される画像の枚数です。 フレームレートの単位がfpsで、frame per secondの略です。 現在映画で標準的なフレームレートは、24fpsで、一秒間に24枚の画像が表示されているわけです。 この枚数が少ないと画像がカクカクして見えてしまいますが、多いと画像がなめらかに見えます。
今回「ホビット 思いがけない冒険」では、フレームレートは48fps、一秒間に48枚の画像が表示されています。 人間の目が確認できるフレームレートは55fpsだそうなので、その上限により近い数字になっているわけです。 ただし、すべての劇場でこのハイフレームレートが採用されている訳ではなく、こちらの6劇場だけだそうです。 ユナイテッド・シネマ札幌、ユナイテッド・シネマとしまえん、109シネマズ川崎、109シネマズ湘南、109シネマズ名古屋、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13
私は一回目は109シネマズ川崎でハイフレームレートのIMAX(IMAX HFR3D)、二回目はTOHOシネマズ六本木ヒルズで普通のIMAXで見てきました。 正直なところ、私はそれほど鋭い目をもっているわけではないので、違いがわかるかどうか疑問だったんですけど、偶然にも一週間以内にハイフレームレートの映像と、通常の映像を見たので、かなりその違いを認識できました。
結論から言うと、素人の目でもはっきりと違いはわかりますが、映像によって効果がわかりやすいものとわかりにくいものがありました。
効果がわかりにくかったのは、動きが少ない画面。人物のバストアップで画面のアングルがあまり変化しないような場合には、ほとんどわかりませんでした。 効果が大きかったのは、画面全体が左右や上下にゆっくりパンしていく画面。特に画面全体に動くものがあると、はっきりとわかりました。 画面が兵士で埋め尽くされた戦場で、全体が左右にパンしていくような画面だと、ハイフレームレートの場合の臨場感はかなりリアルに近く、実際に戦場を俯瞰しているような印象でした。
ピーター・ジャクソン監督もこの効果を心得ていて、広角のモブシーンも多かったので、ハイフレームレートでの迫力はかなりのものでした。
おすすめは……
この映画は、なんといっても映画館で見るのがいい映画ですね。 (もちろん、これが効果的になるようにピーター・ジャクソン監督が撮影したからですが。) 映画というよりはアトラクションに近いんじゃないかと。
この映画の原作の「ホビットの冒険」は、「ロード・オブ・ザ・リング」の原作の「指輪物語」よりかなり短い作品です。 それを「ロード・オブ・ザ・リング」と同じ三部作にしたので、ストーリー的には多少盛っている感じもあり、筋だけをおってみればそれほど内容はありません。
ただし、中つ国の世界観が好きな人は見逃してはいけません。 これは、「ホビットの冒険」のストーリーを楽しむ作品でもありますが、それ以上に中つ国をスクリーン上に見て、さらに自分がその中にいることを感じる映画なんです。
そして、間違いなくピーター・ジャクソンは「世界として」の中つ国を理解して映像として表現できる数少ない人間です。 「ロード・オブ・ザ・リング」が叙事詩なら、「ホビット」はアトラクション。 是非ハイフレームレートのIMAXで見ることをお勧めします。
私も年明けくらいにもう一度くらい見に行く予定です。